“祓う”という文化が、今ふたたび求められている
- Takahito Matsuda
- 6月4日
- 読了時間: 2分

私たちの暮らしの中で、知らず知らずのうちに積もっていくものがあります。
言葉にできなかった想い。処理できない感情。誰かに言えなかった後悔や、置き去りにした痛み。
それらは、目に見えなくても、心の奥にそっと沈殿していきます。
昔の日本には、それらを流す「祓い(はらい)」という文化がありました。
祓いとは、悪いものを排除するための儀式ではありません。 自分の中にたまったものを、自然の流れにゆだね、 また新たに歩き出すための“ととのえ”の文化です。
神社で受けるお祓いだけではなく、日々の所作や言葉にもその精神は宿っています。
例えば、風に吹かれて深呼吸をすること。 水に手をひたすこと。 「いただきます」「ごちそうさま」と言葉にすること。
それらはすべて、小さな祓いのかたちなのかもしれません。
怒りや悲しみをなかったことにせず、 そのまま感じ、味わい、やがて静かに手放していく。
いま、多くの人が本当の意味での「ととのい」を求めています。
心が疲れたとき、世界に押しつぶされそうなとき、 わたしたちはふたたび、祓うという文化の意味を思い出していくのかもしれません。
祓いとは、やさしさであり、循環であり、自分を大切にする技でもあるのです。
そしてそれは、誰にでもできる祈りのかたちでもあります。
今という時代だからこそ、静かに取り戻していきたい文化のひとつです。
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