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AIだけでブランドの世界観はつくれるのか

執筆者の写真: Takahito Matsuda
Takahito Matsuda
5 日前
読了時間: 5分

AIに企画を考えてもらい、コピーを書いてもらい、ビジュアルをつくり、映像まで仕上げてもらう。

ここまでAIだけで進めたとき、ブランドの世界観は一貫したものになるのでしょうか。

 

今回は、ひとつの架空ブランドを想定し、企画・コピー・ビジュアル・映像までをAI中心で制作して検証しました。

 

結論から言うと、AIだけでも「統一感のある見た目」はつくれます。ただし、「そのブランドにしかない世界観」をつくるには、人の判断が必要でした。

 

今回の検証で制作したもの

 

検証では、最初にブランドの概要だけを決め、同じ条件をもとに各制作物を順番につくりました。

 

  • ブランドのコンセプトとターゲット

  • ブランドを表す短いコピー

  • 色・質感・写真の方向性をまとめたビジュアル

  • SNSやWebで使うキービジュアル

  • ブランドムービーの構成と映像イメージ

 

制作の途中では、できるだけ人が細かく修正せず、AIが前の工程を引き継いだときに、どこまで一貫性を保てるかを見ました。

 

企画は速い。でも、ブランドの核は薄くなりやすい

 

企画段階では、ターゲット像、価値提案、コンセプト候補が短時間でそろいました。複数案を比較できるため、方向性を広げる作業にはとても向いています。

一方で、出てきた企画には「心地よい」「自分らしい」「日常を豊かにする」といった、さまざまなブランドで使える言葉も多く含まれていました。

 

内容として間違ってはいません。しかし、なぜこのブランドが存在するのか、誰のどんな経験から生まれたのかという固有の背景が弱いと、きれいにまとまるほど他社との差が見えにくくなります。

AIはブランドの形を整えるのは得意ですが、ブランドの原点そのものを持っているわけではありません。

 

コピーは整う。でも、言葉の温度がそろわない

 

企画をもとにコピーをつくると、コンセプトに合った短い言葉がいくつも生成されました。語尾や長さを指定すれば、一定のトーンに近づけることもできます。

ただ、キャッチコピー、商品説明、SNS投稿を並べると、少しずつ人格が違って見える部分がありました。

 

  • ある文章は静かで余白がある

  • 別の文章は説明が多く、営業的に見える

  • 短いコピーは抽象的で、具体的な価値が伝わりにくい

 

一つずつ読むと自然でも、ブランド全体で見ると、誰が話しているのかが曖昧になります。言葉の温度を合わせるには、残す表現と使わない表現を人が決める必要がありました。

 

ビジュアルは統一しやすい。けれど、似た世界観になりやすい

 

色、光、構図、素材感を細かく指定すると、AIはかなり高い精度で統一感のあるビジュアルをつくれます。

Web、SNS、広告用の画像を並べても、同じブランドのものとして見える状態にはできました。

 

しかし、ここでも課題がありました。

  • 雰囲気は合っていても、商品やサービスの特徴が弱い

  • 美しいが、どこかで見たことのある表現になる

  • 媒体ごとに構図を変えると、世界観の核まで揺れる

  • 映像に展開したとき、静止画の質感を保てない

 

ビジュアルの一貫性は、同じ色やテイストを繰り返すだけでは生まれません。何を見せ、何を見せないか。その選び方まで揃って、初めてブランドらしさになります。

 

映像までつなげると、世界観の弱点が見える

 

映像では、画の雰囲気だけでなく、時間の流れ、音、言葉、テンポが加わります。

静止画では成立していた世界観も、映像にすると急に説明的になったり、動きが強すぎたりして、ブランドの印象が変わることがありました。

 

たとえば「静けさ」を大切にするブランドなら、映像のカット数、カメラの動き、音の余白まで静かである必要があります。色だけを合わせても、世界観は揃いません。

ブランドの世界観は、見た目のルールではなく、すべての判断に共通する基準です。

 

検証して分かった、AIが得意なこと

 

今回の検証で、AIの強みがはっきりした部分もありました。

 

  • 企画の選択肢を短時間で広げる

  • コンセプトを言葉や画像へ素早く展開する

  • 色・構図・トーンの候補を比較する

  • 一つの案からSNS、Web、映像の素材を増やす

  • 修正の方向性を試し、判断材料をつくる

 

特に、まだ形のないアイデアを目に見える状態へ変える速さは、大きな力になります。クライアントとの認識合わせや、初期案の比較にも活かせます。

 

人が担うべきだったこと

 

一方で、一貫したブランドにするためには、人が次の判断を担う必要がありました。

 

  • ブランドが生まれた背景や原点を言葉にする

  • 誰に、どんな感情を残したいかを決める

  • ブランドらしくない案を見分けて削る

  • コピー、ビジュアル、映像の違和感を横断して確認する

  • 媒体が変わっても守るものと、変えてよいものを決める

 

これらは、何かを生成する作業ではありません。ブランドにとって何が正しいかを判断する作業です。

 

AIだけでブランドの世界観はつくれるのか

 

AIだけでも、整った企画や、統一感のあるコピー・ビジュアル・映像をつくることはできます。

ただし、それだけでは「雰囲気のよいブランド」で止まりやすく、「このブランドでなければならない理由」までは届きにくいと感じました。

 

ブランドの世界観は、色や写真のテイストだけではありません。

どんな考え方を大切にし、何を選び、何を選ばないのか。その判断が、企画、言葉、デザイン、映像のすべてに表れたものです。

 

AIは世界観を形にする力を持っています。しかし、その世界観に意味を与え、一貫させるのは人です。

 

AIにすべてを任せるのではなく、人がブランドの核と判断基準を持ち、AIを展開と検証に使う。

この役割分担ができれば、制作の速さとブランドらしさを両立できると思います。

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