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神話は、山に生きている。― 出羽三山で感じた「死と再生」の旅 ―



ずっと、出羽三山に行きたかった。羽黒山、月山、湯殿山。この三つの山は、それぞれ「現世・死・再生」を表すといわれている。

それはまるで、日本最古の神話──イザナギが黄泉の国へ入り、帰ってきて禊(みそぎ)をし、新しい命を生んだという、“死と再生”の物語そのものだ。


羽黒山――現世の入り口

最初に訪れた羽黒山。杉並木に覆われた石段を登ると、空気が変わる。鳥の声、風の音、土の匂い。すべてが優しく、静かに「ようこそ」と語りかけてくる。

ここは現世。でも、何か大きなものに導かれているような不思議な感覚があった。


月山――死の象徴

月山は、イザナギの神話に登場する「月読命(つくよみのみこと)」を祀る山。イザナギが黄泉の国から戻り、身を清めたときに生まれた“夜と月”の神だ。

山の上に立つと、雲が足元を流れ、空と大地の境界が曖昧になる。この世とあの世の間に立っているような、そんな錯覚。足を踏み出すたび、「自分が少しずつ死んでいく」ような感覚すらあった。


湯殿山――再生の地

湯殿山に足を踏み入れた瞬間、全身が「沈黙」に包まれる。

この場所には、はっきりとした社殿はない。あるのは、巨大な岩――それが御神体。「語るなかれ、聞くなかれ」と伝えられ、写真撮影も禁止されている。

でも、あの岩に手を添えた瞬間、言葉にできない何かが、確かに伝わってきた。温かくて、やさしくて、ただそこにいるだけで、「おかえり」と言われたような気がした。

そしてふと、心のどこかでこう思った。“また、生きてみよう”


山形には、神話が生きている

山形には、他にも神話にゆかりのある場所がある。たとえば南陽市の熊野大社。ここでは、イザナギとイザナミ――国を生んだ神が祀られている。三羽のウサギを見つけると願いが叶うという、優しい言い伝えもある。

また、山形の一部には「アラハバキ神」という、古代の土着信仰も残っている。これは中央の神話に描かれなかった、もう一つの“日本”の記憶なのかもしれない。


神話は、昔話ではない


今回の旅で気づいたことがある。神話は、遠い昔の空想ではなかった。

誰かを失ったとき。人生が行き止まりに感じたとき。新しく歩き出したいと思ったとき。

私たちは、知らず知らずのうちに、出羽三山のような“死と再生の道”を生きている。

だからこそ、この山々は、現代を生きる私たちにとっての“神話の舞台”なのだと思う。


神話は、まだ終わっていない。

それは、山の中に。そして、わたしたち自身の中に――。

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