亡くなった人は、本当に消えるのか。
- Takahito Matsuda
- 5 時間前
- 読了時間: 3分

夜の部屋は静かだった。
時計の秒針の音だけが、やけに大きく聞こえる。
大切な人が亡くなってから、この静けさが少し怖くなった。
あんなに賑やかだった家なのに。
今は、思い出だけが残っている。
ふと、懐かしい香りがした。
思わず顔を上げる。
この香りは知っている。
忘れるはずがない。
あの人が、いつも使っていた香りだ。
まさか。
そう思いながらも、胸が少し温かくなる。
それは、あの日から何度か起きている不思議な出来事だった。
ある日は、時計を見た瞬間に目を疑った。
並んでいた数字は、あの人の誕生日だった。
偶然かもしれない。
でも、その数字を見ると胸の奥が少しだけ軽くなる。
そしてある夜、夢の中で再会した。
何年ぶりだろう。
そこには、いつもと同じ笑顔があった。
元気にしてる。
たったそれだけの言葉だった。
でも、その声を聞いた瞬間、涙が止まらなかった。
夢から覚めたあとも、その温もりは消えなかった。
目を閉じると、あの日々が浮かぶ。
一緒に笑ったこと。
何気ない会話。
くだらないことで笑い合った時間。
あの時は、そんな日常が永遠に続くと思っていた。
ある日、部屋の電気が突然チカチカと点滅した。
壊れたのかと思った。
でも、次の日には何事もなかったように普通に戻っていた。
その時、ふと感じた。
もしかして。
そばにいるよ。
そんな気がした。
理由なんてない。
でも、確かに感じた。
それからというもの、時々不思議なことが起きる。
懐かしい香り。
夢の中での再会。
偶然とは思えない数字。
そして何より、理由のない安心感。
ある日、落ち込んで家に帰った夜。
胸が押しつぶされそうなほど苦しくて、誰にも言えない思いを抱えていた。
その時だった。
突然、胸の奥がじんわり温かくなった。
まるで誰かが背中をそっと包んでくれるような感覚だった。
大丈夫だよ。
そんな言葉が聞こえた気がした。
気のせいかもしれない。
思い込みかもしれない。
でも、その瞬間、確かに涙が溢れた。
人は亡くなると、本当に消えてしまうのだろうか。
それとも形を変えてそばにいるのだろうか。
答えはきっと誰にも分からない。
でも一つだけ確かなことがある。
大切な人を思い出したその瞬間、その人はまたあなたの中で生きる。
声を思い出す。
笑顔を思い出す。
温もりを思い出す。
その度に、その人はあなたの心の中で確かに存在している。
だからきっと。
大切な人は、完全には消えない。
思い出すたびに。
感謝するたびに。
その人はまた、あなたの中で生きる。
もしかすると今も、あなたのすぐ隣で静かに微笑んでいるのかもしれない。
だからもし、ふと懐かしい香りがしたら。
夢の中で再会したら。
理由のない安心感に包まれたら。
その時は、こう言ってみてほしい。
ありがとう。
きっとその言葉は、光になって届くから。




コメント