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超短編小説 「幸福の標本」



朝、目を覚ますと、机の上に見慣れない瓶があった。ガラスの中には、小さな光の粒が詰まっている。ラベルには「幸福」とだけ書かれていた。


試しに瓶の蓋を開けてみる。すると、部屋の空気がふわりと柔らかくなった。鳥のさえずりが聞こえ、遠くで波の音がする。これは確かに「幸福」なのだろう。


けれど、不安になった。幸福は、こうして閉じ込めておけるものなのか?瓶の中身をすべて空に放ってみた。光はすぐに消えたが、心は妙に軽くなった。


幸福は、掴むものではなく、ただ、そこにあるものなのかもしれない。

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