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40代で画家を目指す


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 40代になって、私は絵を描き始めた。いや、正確に言えば「再び」描き始めた。

 子供の頃、クレヨンの線は自由だった。木の幹は青でもよかったし、空は緑でも構わなかった。しかし、成長するにつれて「正しい色」を求められるようになり、私は次第に筆を置いた。いつしか、生活というものが、絵を描くことよりも優先されるようになっていた。

 40代は、人生の真ん中あたりに位置する。若さの残滓と、老いの予感が入り混じる年代だ。これまで積み上げてきたものが、自分にとって本当に価値のあるものなのか、ふと疑問に思う時がある。そして、ある日、思い出した。私には、まだ「描く」という選択肢が残されていたのだ。

 しかし、問題は山積みだった。まず、技術がない。次に、時間がない。さらに、資金もない。画家になるための道は、まるで迷路だった。

 だが、私は考えた。才能とは何だろうか。若い頃の私は、それを「生まれつきのもの」と信じていた。しかし今は違う。40年かけて学んだことがある。才能とは、ただの積み重ねだ。日々の鍛錬によって、センスすらも後天的に培われる。

 だから私は、毎日絵を描くことにした。下手でもいい。とにかく手を動かす。最初のうちは、キャンバスに向かうたびに焦燥感に襲われた。何も生み出せないのではないか、という恐れ。だが、筆を走らせるうちに気づいた。描くという行為は、自分の内側を掘り起こす作業に似ているのだ。

 40代で画家を目指すというのは、つまり「過去の自分」との対話なのかもしれない。これまでの人生で見てきたもの、触れてきたもの、経験してきた感情──それらすべてが、今の線に、色に、形に滲み出る。

 何者かになるのに、年齢は関係ない。ただ、自分の手がそれを選ぶかどうか、それだけの話だ。

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